住まいづくりは簡単に経験ができることではありません。そのため、どこから手をつけて良いのか分からないことも多くあります。また、生涯の中でも大きな事業であり、失敗は許されません。例えば、資金のメドを立てる前に間取りを検討しても絵空事に終わるかもしれません。間取りのイメージも描かないままに土地を購入しても、希望は叶えられないかもしれません。不慣れな住まいづくりを、失敗に終わらせないためにも、住まいづくりの手順を知っておくことは大切なことです。
既存住宅や建売住宅を購入するのであれば現物の確認もできますので、決心さえつければ比較的容易に住宅を入手することも可能ですが、新築の場合はなかなかそうはいきません。
ある調査によると、新築計画を思い立ってから、入居するまでに平均で30ヶ月の期間をかけているとあります。その内訳も、まさに悩みを反映しています。具体的に計画を進めている期間というのは意外と短く、迷っている期間が長いものです。
たとえば実際に工事を進めている期間は、着工してから完成まで、一般的には3〜5ヶ月です。長い期間をかけて建てる方が丁寧な気持ちがしますが、実は工期はそのままコストだと意識した方が良いでしょう。つまり長ければ長いほど割高な建て方をしているということです。
工事を始める前の準備段階では、しっかりとした打ち合わせが必要です。建築のための申請等を含めても、2〜4ヶ月です。工事の期間と合わせると約6ヶ月となります。この工事期間を除いた残りの約24ヶ月、つまり2年弱の期間を検討に費やしていることになります。
一方、展示場などを見学した人が契約までにどれくらいの検討期間をとっているかということも、総合展示場の調査の中から知ることができます。実は総合展示場を訪れて1ヶ月以内に契約にいたっている人が一番多く、続いて2ヶ月、3ヶ月以内と続きます。ここでも具体的な検討をしている期間は短いのです。
仮にこの期間を2〜4ヶ月とみても、実は全期間中の3分の2である20ケ月近くを、悶々と悩んでいるということになります。
インターネットや雑誌などで情報を集め事例を見ては研究をしています。しかし、なかなか具体的な答えは見えてきません。そんな時期が意外と長くあるのかも知れません。
住まいづくりを的確に進めるためには、何よりも簡単な手順を知って進めることか大切です。理想を追いかければ夢ばかりが広がり、無理な計画ばかりが進む可能性もあります。結果的には、夢を壊して計画を練り直すことにもなりかねません。住まいづくりのどこに本当の時間をかけなければならないかを知ることが、何よりも住まいづくりを成功させるコツなのです。
具体的な住まいづくりの始まりである、建築請負工事契約をまでの簡単な手順は、次の通りです。
施主にとって家をつくる楽しみの多くは、間取リを考えたりインテリアコーディネートに悩んだりしている時にあると思います。しかし資金の心配も、何となく心の片隅にあります。住まいづくりを進める上では、悩んだり迷うことも多いと思いますが手順に従って進めることで的確に目的を達成できるようになります。
転居にしても建て替えにしても、動機があって初めて新築を検討することになります。まず、新築へのきっかけを一度整理しておくことが大切です。この動機はまさに原点であり、今後の検討の中で迷いが生じた時に帰るポイントになります。大げさに考える必要はありません。簡単に数行のメモをしておくだけでも十分です。
子育てを考えて、家を求める人は大勢います。子どものことでも、家族意識を高めるためにとか、学習の環境を整えてあげたいとかいろいろとあります。また、ご両親への恩返しとして良い環境を提供したい人もいますし、切実に親を引き取るために考える人もいます。自分への褒美として考える人もいます。逆に若い人の中には、家を建てローンを組むことで目標を明確にしようとする人もいます。
まさに、子ども、親、配偶者、自分の顔を浮べることが、住まいづくりのきっかけの整理となります。
住宅建設は人生の中でも一大事業ですから、当然大きな出費を伴うものです。そのためには何よりも資金の目処を立てることが大切です。
そのためにはどれくらいの住まいづくりの資金を動かすことができるかを知ることです。どの建設会社に相談するにしても、この計算だけは先にしておきましょう。(下表参照)
住宅に関するローンは低金利で用意されています。適切な住宅ローンを組み、生活の上で余裕があれは繰り上げ返済してゆくというのがいちはん賢いローンの組み方です。
どれだけのローンを組めるのかは、毎月の返済金額から逆算してゆきます。
基本的な計算は世帯年収から割り出します。世帯年収は、2人以上の所得者がいる場合は合算して求めます。ただし施主となる人の年収の1.5倍が上限です。
この世帯年収に対して一般的な銀行の住宅ローンでは40%までの返済率で組むことができます。ただしこれは上限ですから、年収に2〜30%を掛けて年間の返済可能額を出します。さらに12ヶ月で割ると月間の返済可能額となります。
月間返済可能額を100万円あたりの返済額で割れば、借入れ可能額が算出されます。現在もっとも返済が安い金利の借り入れ返済額は約3100円です。一般的な[フラット35]の固定金利でも3300円ほどです。
月間返済可能額を3200〜3500円で割り、その数字に百万円をつければ、それがあなたの住宅資金の借り入れ能力となります。返済率を30%にして3200円で割れば、いわば最大限の借入れ能力金額を知ることができます。
これに自己資金を加えれば、総額の予算がわかります。自己資金については、最初に上記の借入れ額の10%を基本と考えてください。もちろん増やすことか可能であれば増やします。
しかし、住まいづくりには意外と経費もかかります。あらかじめ経費の配分を考えておかなければなりません。
住まいつくりに必要な費用は様々です。建物本体の費用と、本体以外に別途でかかる費用もあります。また、実際に工事にかかる費用もあれば、工事以外の経費などの費用もあります。
建築計画を土地取得から進めるのであれば、土地代金の予算配分が必要です。直接売り主から買えれば手数料もいりませんが、一般的には3%プラス6万円の手数料が必要です。
土地を選ぶ時の手順のコツは、最初にプランをイメージしておくことです。それによって判断の基準もでき、土地との予算バランスもつかむことができます。
残った予算が建築にかけられる予算です。建物本体の工事費以外にも予算がかかります。たとえは外溝工事。玄関門扉やアプローチ、ガレージなど庭を整えるのも大切です。水道・電気・ガスなどの敷地や前面道路の別途工事。地盤改良などの追加工事。また家を建てるとなるとこだわりたい部位もでてきますのでオプション工事の予算を取っておきます。(下表参照)
これらをすへて差し引いた費用が、建物本体に考えられる予算です。
最後に、残った建物予算額を仮に60万円で割ってみましよう。坪単価60万円の家であれば、どれくらいの広さの家が建つかがわかります。
全体の予算配分を決めたら、具体的な間取りの検討よリも、実は建設を依頼する企業を選ぶことを先にしておくのが成功する手順です。建設企業を選ぶのに、あまり多<の雑多な情報をもとに判断すると逆に分からなくなることがあります。住宅の建設はさまざまな部品を組み合わせることで完成します。その部品すべてを独自のもので建設している企業はありません。つまり本当に差別化できる要素と言うのは限られているのです。
たとえば地震の強度や、高断熱・高気密などの性能のほとんどはそれなりのコストをかければどの企業で.もできることです。その証拠に住宅性能表示制度では、先進的に思われている大手メーカーたけではなく地元の工務店でも等級の高い住宅を建設しています。
技術の差を自慢している企業よリも、近隣で実際に建てている事例を、見せてもらい、入居されている人の意見を聞いてみましよう。いかに顧客の身近にいて、味方になってくれようとしている企業であるか、社長や社員とウマが合うかを見極めるのが、本当のコツです。
いよいよ、新しい家の間取リを作る手順となります。せっかくの機会ですから、一生懸命に考え検討をすることは楽しみのひとつです。そして間取りの可能性は無限にあります。小さなヒントも生かしながら、自分らしい家を組み上げてゆきたいものです。
しかし.紙の上の図面や模型でどんなに検討しても、実際に生活して喜らすのでは違いがあります。さらに人間は順応性が高いので、生活に家を合わせるのではなく、住宅という環境に生活を順応させてゆくことができます。細やかに決めてゆくことよリも、自由に変えることができる余地を残すことが、ブランを検討するときのコツです。
まず、自分たちライフスタイルに合った理想の住まいのイメージを、ご家族で共有しましょう。
さらに、10年後、20年後という長期的な視野も大切です。お子さまの成長や家族構成の変化など、将来像も想定してみてください。
この時、住まいに対する考え、不便と感じている部分、アイデア、疑問、スケジュールなど、1冊にまとめてメモしておくと後々便利です。気になったインテリアのカタログや、図面などをまとめるファイルも作りましょう。
又、敷地について把握しましょう。
敷地について把握しておきたいことは、
などがあります。ご自身ですべてを調べるのは大変なので、わからないことは専門家に相談しましょう。
住まいの広さや間取りを考える上で大切なのが、ご家族の生活スタイルです。
まず、現在の生活スタイルとその改善点を考えます。次に先々のライフスタイルの変化をイメージしてみましょう。例えば、
ご家族の生活スタイルを平日・休日などで分け、一目で見る事ができるタイムテーブルをつくられることをお勧めします。時間だけでなく、その時にどこにいるのかということも書き込みます。
生活スタイルを元に住まいの条件をイメージしてみましょう。ああしたい、こうしたいを、すべてリストアップしてみて、優先順位をつけておくとよいでしょう。
リストアップする前に、ご家族それぞれの要望を1枚の紙に書き出して見ると、イメージがしやすく、まとめる際にも便利です。
その他として
間取りと見積もリ金額が決まり、当初の予算に収まるようであれば、住宅取得が現実のものとなります。この項目に、さらに引き渡し日を定めれば請負工事契約の締結となります。
請負工事契約は、現物がある売買契約とはちがい、図面通りに建物を建てる契約です。その意味では、契約が最後の儀式ではなく、むしろ始まりの儀式となります。また、この契約の履行を請けて負うのは、建設企業の方です。
また、2009年10月に住宅瑕疵担保履行法が施行されて、すへての住宅建設会社は、構造体や雨漏リなどの重大な瑕疵に対して、10年間の瑕疵担保責任が義務付けられています。この法律の下では、大手メーカーも地元の建設企業も変わりがありません。
また、入居後もさらに専門的なメンテナンスや、補修を重ねてゆく必要があります。その意味では、その住宅を建てた建設会社とのつきあいは、かかりつけの医者のようなものです。近くにいて、新築だけではなくリフォームの相談も乗ってくれる企業を選び、長いおつき合いをすることです。